とある孤島の物語
とある時代のとある国に、トーマス、ゴードン、ヘンリー、ジェームスという、
それぞれにとても仲のよい少年がいました。
ある時、4人は川へ遊びに行きました。
川原にはいつも使っている手漕ぎボートがあり、それに乗って近くの町へ出かけることにしました。
しばらく乗っていると、大きい波がボートに襲いかかり、ボートが転覆してしまいました。
川の流れが速く、4人は自力で泳いで川原へ戻ることができません。
ボートにしがみ付いて流されることになりましたが、そのうちに海へ出ました。
海では大きな波によって沖まであっという間に流されてしまいました。
なんとかボートは上向きに戻りましたが、オールもなく舵をとれません。
こうして4人は一晩ボートに乗っている事になりました。
翌朝、ボートは、海にぽつんと浮かぶ島の海辺に漂着していました。
あとで確認したところ、この島はひょうたんの形をしていました。
このような時、携帯電話で救助の連絡ができれば、この後の苦労がどんなに少なかった事でしょう。
さて、しばらく島を散策すると他に住人はおらず、
食料や水は皆が生活する分には十分である事が分かりました。
そこで、食料の調達は2人ずつの組に分かれて、毎日協力して行うように約束しました。
木登りが得意なトーマスとゴードンは、島の中央部に位置する森で果物を集め、
魚釣りが得意なヘンリーとジェームスは、手作りの竿で海の魚を釣ります。
夕刻になると、その日に集めた食材を持ち寄って1日分の料理を作ります。
昼ごはんはお弁当を持って出かけます。
そして、木を並べて、雨に濡れずに眠られるような住居もつくりました。
ある日の事、いつもは大変の仲の良いトーマスとヘンリーではありますが、
食料の分配に関して仲たがいをしてしまいました。
おなかを空かしたヘンリーがトーマスのバナナを食べてしまったのです。
怒ったトーマスとヘンリーは、それぞれ住居を飛び出してしまいました。
しかし、1人で食料を探していると、満足な量の食材を集められない事が分かり、
その日の夕刻には2人とも住居に帰ってきました。
ゴードンやジェームスも協力し合う大切さに気付き、
ヘンリーはトーマスに謝って、また翌日から以前のように2人組みで食料を調達する事にしました。
ジェームスの提案により、貨幣を用いて食料を交換する事になりました。
仲直りの時に協議の結果決まったルールを、まとめてみます。
一部、モデル化しやすいような条件が含まれます。
<物語のネタバレ?>
参加者が4人なのは、2人の場合、物々交換で十分なため、
この後の目的とするモデルで、貨幣を導入する理由がないという設計上の都合による。
<このモデルで結果表現されるものは?> 結論から先に
・このモデルにおける貨幣とは、労働量の事前申請書であり、
食欲需要を満たすために、労働量を変化させる調整過程を表現する事ができる。
・システムの調整過程の意味は、
生産量の変化を、他方の生産者との直接の合意なしに、自律的に変更しても、
システムは[需要を満たそう]と調整して振舞うので、
「参加者が、労働量の差に関して理不尽さを感じないという意味で健全な思想を持つモデルである」
批判的に考えてみると、ここの自律的な動作の表現が設計できているのかは、検討の余地がありそうです。
・・労働証明書という事で、当期の賃金貨幣を事前配布するという設計があるので、
・・あらかじめ、それぞれの分配差であったり生産量の増減という点に関して、
・・参加者が知り得ているという事になる。
・・・だから、参加者全員が、それぞれの需要と供給量を合計して、事前に需給一致の均衡を計る事もやろうとすればできる。
・・しかし、このようなワルラスの競売人のような、仕組みは導入していない。
・・生産量の総量は事前には無関心で生産者任せであり、生産物の分配は市場での交換ルールに任せている。
・・(実装では、サイコロを振るような方法で、商品を購入する交換順序が決まります。)
・・現実の経済システムを考えたときも、システム任せでいられる所が、肝なのではないか。
・・モデルの設計でルールをガチガチに固めないと作れませんね。
・・それでも、現在の貨幣とどこが違うのか考えてみるきっかけにはなるかなぁ。
<このモデルの設計>
前提
・参加者は、生産される2種類の生産物を必要とする。
・1種類の貨幣を用いて生産物を交換する。
・<<単純化の為に>>トーマスとゴードンは生産者A、ヘンリーとジェームスは生産者Bのように
物語中の同じ組の2人を、生産者エージェント1人とみなす。
・<<単純化の為に>>トーマスとゴードンは消費者A、ヘンリーとジェームスは消費者Bのように、
生産者と同じ組である2人を、消費者エージェント1人とみなす。
※食欲が同程度で毎期同じ量だけ食べるので、区別しない事ができる。
生産
・生産物A[果物]、生産物B[魚]を、それぞれ2人(あわせて4人)で生産する。(エージェントとしては2人)
・生産技術は考慮しない、変化しない
釣竿等の生産に必要な道具は、毎期作り直しているが、道具の改善によって生産量が変化するほどの技術革新はない。
価格決定方法
・初期商品単価は任意で、モデル作成者が設定可能である
・価格差は2つの生産物の単位あたりの生産の難しさ(例えば単位あたり労働時間)の比率を表す。
・初期賃金比率は、物語中では4人の相談により決定されるとして、「(エージェントの)初期賃金 / (例えば果物の)初期生産数量」で商品単価が決まる。
プログラム実装上では初期賃金、 初期生産数量ともに外部変数となる。
・システムの動作期間、商品単価は変更されない
商品取引
・あらかじめ決まっている商品単価を用いて、貨幣と商品を交換する。
・すべての商品は、住居近くの広場に並べてあり、サイコロを振って4人(エージェントとしては2人)で取引順序を決める。
・同じ種類の財に関して、その生産者である2名が協力して、労働・生産・販売を行う。
商品の特徴
・消費である果物・魚は、どちらも保存できず、次期に繰り越せない。
(そんな果物があるか!?とはつっこまない事にしましょう。)
生産量の調整
・生産量の初期値は、任意で設定変更できる。物語では交換ルール決定後の初日の生産高である。したがいまして、初日は商品単価を知らずに貨幣を持って労働を開始します。
・生産者は当期の取引結果を確認して、次期の生産量を判断する。
(生産量に関しては季節性による変化はない。)
・取引の際に、売れ残りから超過供給である事、または消費者の購入希望数量から追加需要を知ることができる。
・生産物の供給量は、消費者の需要が実現する方向に調整するが、供給者の労働需要の制約をうける
貨幣の特徴
・貨幣は期初に当期の賃金として分配される。
・初期賃金の差は、労働量の比率として、トーマス達は合意している。
・貨幣賃金は労働証明書のような意味を持ち、次期には繰り越せない。(貨幣を貯蓄しようとするようなロジックを実装しないという意味。)
■ただし、取引できなかった貨幣賃金の端数に関して、繰越が可能なように、プログラム上では設定変更が可能。
・貨幣量は変更可能である。例えば貝殻に印をつけたような貨幣を作る事にする。
(従いまして、当期の労働量を事前申請したメモ書きみたいなものになります。。。)
需要量
・需要量は所与である。物語の場合、それぞれが食べられる適量である。
(・・・需要量の個人差を賃金比率と対応させれば、初期設定の外部変数が1つ減るなあ。でも今のところは、需要量も賃金もそれぞれ独立した外部変数になっています。)
■疑問:今回の物語では問題になりませんが、システム参加者が増えた場合、労働量の比を初期値として与えて良いのかな?
全エージェントが相談して決めましたとか言うのは無理なお話なので。労働組合間で協議されたとか。いずれ考えましょう。
<設計>
アルゴリズムのメモ書き
<ソース>
zipファイルになっています。実行結果のサンプルも含まれます。
econom20130408.zip
<動作確認>
上側がエージェントA、下側がエージェントBという対称のグラフにしてみました。
グラフ出力結果<解析?結果のまとめ>詳しい事は、置いておいて。サイコロの順番で購入順序が入れ替わるルールはあっても、一方の食欲需要が満たされると、そのエージェントの生産者としての立場で供給量を制限してしまう、ってことが、満たされていないエージェントが発生してる理由になってると思います。まあ、そういう風に組み立てたと言われればそれまでなのだけど。ルールは健全(上述参照)だと思っていても、取引できない場合があるという事で。あと、もうちょっとデータを集めて解析してみると何かハッキリするのかな。<しばらく先の予告編>で、このプログラムこのままでは道具としておそまつだけど、エージェント数を増やして商品数も増やした時に、現実の市場に近くなったとして、みんなの手元に貨幣が循環してますか?という失業問題のメカニズムにつっこめるのではないでしょうか。もちろん投資財とか、生産性とか、銀行とか、等等等等、今回のモデルに追加しないといけない要素は結構あると思うけど。
考慮中
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